脳機能の障害




記憶障害は典型的な脳機能障害

交通事故直後に記憶の障害が現れることがまれあります。

身体に大きな衝撃が加わるため、特に頭に衝撃を受けた場合に、交通事故の当時の記憶がなくなったり、あいまいになったりすることがあります。

身体に大きな衝撃をうけなくとも、交通事故と言う非日常の体験から精神的なショックを受けて、記憶障害が生じることがあります。

しかし、交通事故から時間が立ち、精神的に落ち着いてくると、交通事故時の記憶を思い出せてくることがほとんどです。

ですが、交通事故からしばらくたっても記憶が戻らなかったり、交通事故から物忘れがひどくなったりすることがあります。

交通事故に関してのみ思い出せない場合には、交通事故の状況が凄惨であったり、怪我がひどかったりしたことなどの心因性のショックが原因で、ある意味精神を正常に保つための自己防衛本能であるため、大きく心配する必要はありません。

それよりも深刻なのが
『事故以前の記憶がなくなる』
『会社のいつもしている業務の手順が分からなくなる』
・『以前ならば簡単に覚えられた事が覚えられない』
といったことです。

『事故以前の記憶がなくなる』と言うのは、ドラマなどで聞き馴染みがある記憶喪失といえば分かりやすいと思いますが、医学用語では『健忘』と言います。

心因性が起因の『解離性健忘』では、文字はきちんと読めますし計算もできるし、テレビがテレビであることはわかっても、自分の名前や家族、自分に関する生活の歴史が思い出せなくなります。
事故のショックで数時間から数週間で思い出せないということはままあるのですが、そのまま思い出せないという例もあります。

『会社のいつもしている業務の手順が分からなくなる』

『以前ならば簡単に覚えられた事が覚えられない』
と言う場合はさらに深刻です。

このような場合には脳にダメージを負っており、それによる記憶障害が疑われるからです。

 

注意障害・遂行機能障害・行動障害も発生する可能性がある

脳のダメージによる障害は記憶障害だけではありません。

『注意が散漫になる』・『同じことを続けて出来ない』・『2つのことを同時に行えない』といった『注意障害』。

『計画を立てることが出来ない』・『人からの指示がないと行動出来ない』・『計画通りに出来ず、行き当たりばったりになる』といった『遂行機能障害』。

『団体行動が出来ない』・『周囲の雰囲気を読んで行動できない』という『行動障害』。

『無気力になる』・『攻撃的になる』・『疑い深くなる』といった『性格の変化』などがあります。

このような記憶や脳の機能に障害がある事を『高次機能障害』と言うのですが、事故当時に脳震盪や脳内出血などの症状があり、すぐに検査や診察を受けていた場合には、『脳内出血が原因の記憶障害』などと診断がつきます。

しかし、頭部に大きな怪我などが無く後からそれらの症状が出てきた場合、『事故によるものなのか?それとも別のことが原因なのか?』と、原因がはっきりしなくなります。

高齢の場合、交通事故による障害か否か、が争われる

特に患者が高齢の場合は、『加齢による認知症が発生したのか?それとも以前より認知症があったのか?』ということも問題となってきます。

交通事故以前から認知症があり記憶障害の症状がすでにあった場合、保険会社は
『記憶障害は以前からあったもので、交通事故でひどくなったとはいえず、交通事故から症状固定の間の記憶障害の進行も、年齢相当の進行度で後遺症とは認められない』
との主張がされることがあります。


裁判の判例でも記憶障害等に関する障害を全面的に認めてはおらず、事故以前の記憶障害の状態や患者の年齢を鑑みて、高齢である場合には『交通事故との因果関係は認められない』とするものがあります。

高齢と言えない年齢であっても、認知症の発症の可能性や元からの行動特性が問われることもあるため、 後遺障害認定の申請をする場合には注意が必要です。


 

日常生活への影響

交通事故で頭部にダメージを負った場合、脳内出血などの直接的な傷害のほかに、脳の精神機能に障害が出ることがあります。

精神的な脳機能障害の代表的な症状には、『記憶障害』・『注意障害』・『遂行機能障害』・『行動障害』・『性格の変化』があります。


記憶障害の場合、昨日の出来事を思い出せないことがある゛

記憶障害の場合、『過去の出来事が思い出せない』・『新しい事が覚えられない』の2つがあります。

「1週間前の夕ご飯は何を食べた?」と言われてすぐに思い出せなくても、「あの日は一緒にお寿司を食べに行ったでしょ?」と言われて、「ああそうだった。」と言う場合には大丈夫なのですが、「食べになんて行っていない。」と言う場合には、記憶障害が疑われます。

また、「ポストに新聞を取りに行って。」とお願いしたにもかかわらず、『取りに行くこと』ではなく、『頼まれたこと』自体を忘れてしまうというケースもあります。

家族間の小さな出来事ならば、忘れてもフォローできることもありますが、仕事の場合「1週間前に頼んだ資料はどうなった?」、「先ほど得意先に電話するように言ったのに、していないからクレームが来た。」と、大きな問題となりかねません。

 

注意障害の場合、自動車の運転は要注意となる

注意障害の場合、『注意力が散漫になる』・『同時に2つの事が出来なくなる』など、注意力不足が顕著になります。

例えば、お味噌汁を作るのにお湯を沸かしながら、具を切るというのはよくある事です。

しかし、注意障害の人は具を切っている事だけに気を取られ、お湯が沸騰し続けていても気が付きません。

さらに、テレビで気になるニュースが聞こえてきたりすると、具を切る事を忘れてしまったり、最悪手を切ったりします。

注意障害がある方の車の運転は要注意になります

自動車の運転には、周囲の状況に加え、自分の自動車のスピードや車間距離など、注意を払わなければならない事が同時に多数あるため、注意障害の患者は事故を起こしやすくなります。


遂行機能障害は、行動の見通しを立てることができなくなる

遂行機能障害の場合は、予定を立てて行動することが出来ないことが多いです。

見通しを立てることが苦手で、誰かの指示がなければ行動することが出来ず、
「病院に診察に行く」
と伝えても、普通ならば
『病院に行くのならば診察券と保険証とお薬手帳を用意しないと。お金も1万円くらいいるかな?』と想像できることも出来ず、病院に行ってから
「診察券を忘れた。」、
「今日はお金を持っていない。」
ということが多いです。

家族が「診察券を持った?お金は?」と声掛けをして、「ああ、忘れていた。」となればよいのですが、「分かっている。何度もうるさい!」と、喧嘩の火種となることがあります。


行動障害の場合、周囲の状況や雰囲気に合わせた行動が出来なくなる

葬儀など普通ならば無言で沈痛な雰囲気でなければいけないところで大声を出したり笑ったり、反対に結婚式で怒って暴れたりと、状況にそぐわない行動をとったりします。

一般的には『空気が読めない』と言われることが多いですが、行動が大きく逸脱すると異常行動とみなされるため、周囲から浮いた存在となってしまいます。



性格の変化が攻撃的な方向に向かうと、家族の苦痛が大きい

性格の変化の場合、『以前は活発であったのにふさぎ込みがちになった』、『温厚であったのに、ちょっとしたことで怒るようになった』、『物静かな人だったのに、物を投げつけたり、暴力を振るうようになった』と、消極的もしくは攻撃的な性格となる事が多いです。

消極的な性格の変化の場合はうつ病が疑われ、周囲の人のサポートが欠かせなくなります。

攻撃的な性格へ変貌してしまった場合には、DV(ドメスティック・バイオレンス)や家庭内暴力へと発展することもありますし、家庭内で収まらず他人への暴力行為に及んでしまうと刑事事件へと発展してしまいます。

交通事故を境に行動や性格的な変化が見られた場合には、速やかに脳神経科と精神科を受診をした方が良いでしょう。


脳機能障害の後遺障害認定について

精神的な脳機能障害の代表的な症状には、『記憶障害』・『注意障害』・『遂行機能障害』・『行動障害』・『性格の変化』があります。

医学的には高次脳機能障害と言われるもので、後遺障害認定に置いては精神障害系の認定基準で判断がされます。

介護第1級(自賠責保険金額4000万円)
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

介護第2級(自賠責保険金額3000万円)
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

第3級(自賠責保険金額2219万円)
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

第5級(自賠責保険金額1574万円)
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
「身体的能力の低下などのため、独力では一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの」

第7級(自賠責保険金額1051万円)
・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
「中程度の胸腹部臓器の障害のために、労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもので、独力では一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの」

第9級(自賠責保険金額616万円)
・神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
「社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」

第12級(自賠責保険金額224万円)
・局部に頑固な神経症状を残すもの

第14級(自賠責保険金額75万円)
・局部に神経症状を残すもの


脳機能障害の問題点

脳機能障害の後遺障害認定において、問題点がいくつかあります。

等級の説明を見ると『常に介護を要する』、『随時介護を要する』と、事前に等級の判別がつきにくい事が多い点です。

そのため、
「医者が『後遺障害等級でいうと5級くらいかな?』と言って診断書を書いてくれたのに、自賠責で認定されたのは5級だった」
とか、
「仕事が出来なくなったので最低でも9級と思っていたが、後遺障害等級の認定がされなかった」ということがあります。



既往症がある場合には、差額が支給される

また、以前より認知症を患っていたり、発達障害があったりした場合には、後遺障害等級が受けられても、等級そのままの慰謝料は支払われません。

例えば、交通事故以前から第9級相当の症状があり、交通事故の後遺症で第3級相当となった場合には、自賠責基準の第3級の2219万円が支払われるのではなく、第9級の616万円を引いた1603万円が支払われます。


高齢者の場合、もともとの脳の衰えを調整される

特に高齢者の場合には、個人差はあっても加齢のために大なり小なりの脳機能の衰えがあるため、それを加味して判断されます。

そのため、「80歳の父は交通事故以前はしっかりしていたが、交通事故以降物忘れの症状が出てきた。」との主張をしても、「物忘れの程度が同年代の男性と比べて年齢相応。」と判断された場合には、後遺障害認定がされないこともあります。


心因性との区別が難しいケースがある

では、若年層が高次脳機能障害の症状が出た場合、すんなりと後遺障害認定が受けられるかと言うとそうでもありません。

判例を見ても、被害者は『脳の機能に障害がある高次脳機能障害』と主張をしても、裁判所は『心因性』、つまり脳自体に異常があるわけではなく、ストレスなどの精神病と判断し、より軽度の後遺障害等級の認定や後遺障害認定を認めないケースもあります。

一度自賠責保険から後遺障害認定がされてしまうと等級の変更がかなり難しくなるため、1度目の後遺障害等級認定の申請の時点で、正しい後遺障害等級を受けることが重要と言えます。

そのため、1度目の後遺障害等級認定の申請前に、交通事故に詳しい弁護士に相談をして、申請書類の内容をチェックしてもらう方がより安全と言えます。



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