腹部・内臓の後遺障害

交通事故での後遺障害だと、足や腕など『見える部分』の後遺障害を思い浮かべることが多いのですが、腹部や内臓など『目に見えない臓器』に重い後遺障害を負うこともあります。

交通事故ではすさまじい衝撃が身体にかかりますが、胸部は肋骨と言うガードがあるためワンクッションあります。

しかし、腹部は背中側の背骨以外は骨がないため、内臓を守るのは腹部の筋肉と脂肪のみですので、衝突のショックを受け止めきれないだけでなく、棒状の物が突き刺さった場合やすやすと腹部を貫くことがあります。

そのため、交通事故により内臓破裂や損壊・壊死が起こる事があります。

最近の自動車はバンタイプが多くなっているため、被害者が歩行者の場合には、膝から胸のあたりまで衝突されることが多く、さらには道路に叩きつけられることもあるので、内臓破裂のリスクが上がります。

また、運転手もスピード超過の状態で衝突した場合には、シートベルトが内臓を圧迫したり、シートベルトをしていない場合ではハンドルに体が叩きつけられたり、車が衝突で押しつぶされて内臓破裂と言うケースも珍しくありません。

ここでどのような障害が起こるのか知るために、内臓の種類と役割をあげていきます。

肝臓は、毒を中和している


肝臓は『もし肝臓の機能を人工的な機械で全てまかなう場合には、工場1個分の機器が必要』と称されるくらい、様々な役割を果たしています。

肝臓の主な働きとしては、蛋白の合成・栄養の貯蔵、有害物質の解毒・分解、消化に必要な胆汁の合成・分泌です。

特に有害物質の解毒・分解は生きていくうえで重要で、そのままでは有害なアルコールの分解も肝臓の作用によるものです。

膵臓を痛めると、糖尿病のリスクが上がる


膵臓はインスリンの分泌をつかさどり、血糖値を一定に保つ作用があります。

もし、膵臓が無くなった場合には、血糖値を下げるインスリンの分泌がなくなるため糖尿病となり、一生インスリン注射が必要となります。

腎臓は腰のあたりに左右2個あり、血液を濾過をして有害物質を尿に排出しています。

腎臓の働きが悪くなると、有害物質を尿の中に排出できず、全身に蓄積していき尿毒症になり、最悪死亡してしまいます。

脾臓はいらなくなった赤血球の破壊の役割がありますが、なくても生存できるため『不要の臓器』とも揶揄されることがあります。

しかし、近年の研究では肝線維化進展において脾臓は、腸と肝相関に対する肝臓の免疫寛容状態の維持に重要な役割を担っているのではないかと言われています。

小腸は消化物の栄養の吸収を、大腸は水分の吸収を担っています。

つまり、内臓破裂や損傷をしてしまうと、内臓が担っている役割が十分果たせなくなったり、まったく機能が無くなってしまったりすることになります。

特に『血液のタンク』とも言われている肝臓が大きく損傷してしまった場合は、後遺障害以前に出血で命の危険性があり、出血を止めたとしても肝臓としての用をなさないのであれば、生きるために必要な血液量を体内にストックできず死に至ります。

また、内臓の損傷には、生殖機能の損傷もあります。

男性であれば睾丸、女性であれば子宮や卵巣が該当します。

これらが損傷した場合、生殖が不可能、もしくは非常に困難な状態に陥る事があります。

内臓系の損傷の場合、外傷系よりも定期的な通院と治療・投薬が必要なケースが多いです。

外傷の場合にはリハビリや日々を重ねることによる馴れ(馴化)で軽減することがあるのですが、内臓の損傷の場合は内臓自体の機能が無くなっているもしくは減少しているため、良くて寛解状態か、投薬がなければ悪化することになるからです。

そのため、内臓系の後遺障害が残った場合には、程度によっては一生涯の通院・治療・投薬を覚悟しなければならないこともあります。

その点をよく理解せずに示談をしてしまうと、「示談金額がそこそこもらえたと思ったけれども、一生涯の治療費と薬代で考えた場合、全然足りない。」と言ったことも起こりえます。

示談する際には将来的な治療や投薬なども含めて、後遺障害慰謝料などの精査をする必要があるため、交通事故に精通した弁護士に相談の上、加害者に請求をしていく方がよいでしょう。

 

日常生活への影響

交通事故により、腹部・内臓に障害が起こった場合には、損傷していた内臓が担っていた役割に関することに支障が出ます。

肝臓の主な働きは、タンパク質の合成・栄養の貯蔵、有害物質の解毒・分解、消化に必要な胆汁の合成・分泌なので、肝臓が損傷した場合にはこれらに支障が出ます。

タンパク質の合成が出来ず栄養の貯蔵が出来なければ、いわゆる『栄養失調』状態が続きます。

有害物質の解毒・分解が出来なければ、体内に入った有毒物質がいつまでも体内に残り続けるため『中毒症』となった状態のままになります。

有毒物質と言うと『毒』と言った印象がありますが、実際にはアルコールや銀杏に含まれるメチルビルドキシなど、日常に食べているものにも微量の毒があり、それを肝臓が解毒しているので健常者には何ともなくても、肝機能障害がある場合には重度の中毒症状が現れることもあります。

肝臓が悪くなった際に現れる症状に『黄疸』がありますが、これは肝臓で作られる胆汁のもとであるビリルビンが血液内で高濃度となる事で起こります。

黄疸には皮膚や白目が黄色くなるほかに、副次的な症状としてはかゆみがあります。

膵臓を痛めると「疲れやすくなる」というような症状が現れる


膵臓は血糖値をコントロールするインスリンを分泌する働きがあるため、膵臓が欠損してしまうとインスリンが分泌されないので、重度の糖尿病患者となります。

そのため、糖尿病の症状である『のどが乾く』、『トイレの回数が増える』、『疲れやすくなる』と言った症状のほかに、重症化すると『失明』や『腎不全』を引き起こします。 また、インスリン注射による血糖値のコントロールが必要となるため、日常的にインスリンを携帯する必要があります。

腎臓を痛めると、人工透析が必要となる

腎臓は血液をろ過して、有害物質を尿に排出しています。

腎臓に障害が現れると十分に有害物質が排出されず尿毒症を引き起こしたり、尿が作られず排尿障害が起きて身体にむくみが出ます。

この場合、腎不全と同じように血液中から有害物質と余分な水分を抜く人工透析が、一生涯必要となります。

日常生活では腎不全と同様に塩分と水分の摂取制限が必要となり、血管が有毒物質にさらされるので血管がもろくなり、内出血を起こしやすくなったりするため、脳内出血や心臓病のリスクを高めることになります。

大腸や小腸は他の内臓と比べて細く長いため、1か所で損傷が起きてもその部分を切除し、つなぎ合わせる手術が行われるので重大な障害が残る可能性は低いのですが、大腸を切除した場合には便の水分を十分に吸収しきれずに、常に下痢状態になる事もあります。

また、肛門部分の障害が起こった場合には排便障害が起こり、便秘ならば日常的に浣腸や摘便が必要になり、逆に便失禁のために人工肛門が必要になる事もあります。

生殖器官の障害は健康にも影響がある

また、生殖機能の損傷もあります。

男性であれば睾丸(精巣)、女性であれば子宮や卵巣が該当します。

これらが損傷した場合、生殖が不可能、もしくは非常に困難な状態に陥る事があります。

交通事故の被害者がある程度の年齢以上で、年齢的に生殖が困難である場合であっても、生殖機能の喪失が精神的な打撃となる事がありますし、未婚もしくは結婚してまもなくで子供がいない、2人目以上を希望していると言った場合には、身体のみならずライフスタイルや夫婦間などにも大きな問題を作ってしまう危険性があります。

また、生殖器官は性ホルモンと密接な関係があります。

男性ホルモンは主に睾丸で作られますし、女性ホルモンは主に卵巣で作られます。

生殖器が喪失もしくは機能不全となった場合には、これらの性ホルモンの分泌が無くなってしまうことを差します。 男性ホルモン・女性ホルモンはともに男性女性の身体を作り、精神のバランスにも関係してきます。

その性ホルモンが分泌されないということは、重度の更年期障害と同じ症状が現れます。

更年期である症状は個人によってかなり違いますが、倦怠感・イライラ感・ほてり・めまい・頭痛・気力の減退・思考力の低下・自律神経の乱れ・抑うつなど、かなりの広範囲にわたり複数の症状も出ることが珍しくなく、人によっては寝込んでしまう事があります。

この場合、ホルモン剤の投与が効果的なのですが、効きに個人差があったり、合併症によっては使えないホルモン剤もあるため、通院による投薬が欠かせなくなります。

 

腹部・内臓に関する後遺障害認定について

交通事故での腹部・内臓に関する後遺障害は、生殖器部分を除き『胸腹部臓器の機能』でまとめられており、『腎臓を失ったから』ではなく、どれだけの障害が現れているかが重要になります。

腹部・内臓の障害に対する後遺障害認定の要件は、細かく条件付けされています。

第1級(自賠責保険金額3000万円)
・胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 「重度の胸腹部臓器の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもので、日常生活の範囲が病床に限定されているもの」

第2級(自賠責保険金額2590万円)
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 「高度の胸腹部の障害のために、生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもので、日常生活の範囲が主として病床にあるが、食事、用便、自宅内の歩行など短時間の離床が可能であるかまたは差し支えのない状態のもの」

第3級(自賠責保険金額2219万円)
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 「生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の障害のために、終身にわたりおよそ労務につくことができないもので、自宅周囲の歩行が可能かまたは差し支えないが、終身にわたりおよそ労務に服することができない状態のもの」

第5級(自賠責保険金額1574万円)
・胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 「身体的能力の低下などのため、独力では一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの」

第7級(自賠責保険金額1051万円)
・胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 「中程度の胸腹部臓器の障害のために、労働能力が一般平均人以下に明らかに低下しているもので、独力では一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの」
・両側の睾丸を失ったもの

第9級(自賠責保険金額616万円)
・胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 「社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」
・生殖器に著しい障害を残すもの

第11級(自賠責保険金額331万円)
・胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 「一般的労働能力は残存しているが、胸腹部臓器の機能の障害が明確であって労働に支障を来たすもの」

第13級(自賠責保険金額139万円)
・胸腹部臓器の機能に障害を残すもの ここで争点となるのが、障害によりどれだけ日常生活に支障があり、労働能力が喪失したかという点です。

保険会社側から「実際に減収したのか?」という反論がされることがある

例えば、被害者側が『腎臓の喪失で重度の腎不全と同様の強い倦怠感を日常的に感じるため、仕事をすることができない。 そのため第3級に相当する。』と主張しても、加害者側は『被害者と同年代の重度の腎不全の患者でも、週2回の人工透析をしながら会社に勤務しており、賃金センサスの平均賃金を受け取っているため、被害者の主張は納得できない。』との反論がなされることがあります。

この場合、裁判所は診断書の内容を重視するだけでなく、被害者の実際の生活にどれだけの支障が出ているかも判断材料とします。

交通事故から裁判まで継続して起き上がることができないような症状が続いているのならば、裁判所も認定に傾くかもしれませんが、普段から飲酒を伴う飲食店に行ったり、介添えなしの旅行に行くなど、被害者の主張に疑問がある場合には認められる可能性は低くなると言えます。

後遺障害認定されるか否で、後遺障害慰謝料が支払われるか変わってくるのですが、弁護士を通じて請求する場合には判例基準で請求するため、自賠責基準に比べると大幅に増額します。

自賠責基準だと慰謝料部分は第1級で1100万円、第2級で958万円、第4級で712万円、第9級245万円・第11級で135万円ですが、判例基準ですと第1級で2800万円、第2級で2370万円、第4級で1670万円、第9級690万円、第11級で420万円なので、差は3倍近くなります。

 


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