鼻の後遺障害について


人は交通事故と言った突発的な危険にさらされると、頭部や顔面を守るためにとっさに手や腕で頭や顔を覆います。

しかし、交通事故は自動車と言う高速で移動する物が衝突してくるため、防御態勢を取ることなく衝突してしまう事が多いです。

そのため、自動車の運転手や同乗者がシートベルトをしておらず、フロントガラスに顔面をぶつけて鼻を骨折したり、ハーフヘルメット着用のバイク運転手が地面に投げ出されて顔面をアスファルトでこすってしまい、鼻がもげて壊死してしまうと言った事例があります。

鼻の障害で一番重いものは、欠損つまり切断や壊死などで鼻が無くなることです。

鼻は顔面を横から見た際に飛び出ているため、顔面にダメージがあった際に真っ先に鼻が損傷することが多いです。

しかし、鼻は柔らかな筋肉と鼻骨で構成されているため、鼻骨の骨折はあっても鼻本体が欠損してしまうのは、比較的少ないと言えます。

それでも、交通事故時に金属片が鼻にあたったり、激しい衝突で鼻がつぶされたり、車両の火災に巻き込まれて鼻が重篤な火傷を負い治療できなかったと言ったことで、鼻に重大なダメージを負うことがあります。

鼻が欠損したりした場合、再建手術やエピテーゼと言った医療用人工物で補うことが多いのですが、鼻本来の機能を回復することができません。

鼻の欠損により、さまざまな症状が発生する

鼻は鼻毛や中の粘膜で、ホコリや花粉・ウイルスなどをキャッチして排出し、体の中に入らないようにするシステムがありますが、鼻が欠損してしまうとこのシステムが働かないもしくは働いても弱くなるため、花粉症がきつくなる・風邪をひきやすくなると言ったことが起こります。

また、鼻は体温と外気温と差がある際のワンクッションを担っているため、再建手術が出来ずエピテーゼも体質に合わずしていない場合には、乾燥した空気や冷たい空気をダイレクトに体内に入れてしまうため、不快感を生じるだけでなく、呼吸に問題が出ることもあります。

また、鼻は顔の中で目立つ部分であるため、鼻が無い事で醜貌(みにくい容貌)であると患者が感じやすく、うつや対人恐怖症などを併発することがあります。

他に鼻にかかる障害には、嗅覚の減退・喪失があります。

臭いを感じるメカニズムは、鼻の奥にある嗅上皮にある嗅細胞が、臭いの成分に反応して脳に信号を送り、臭いを認識します。

嗅覚は五感の中では原始的な本能であり、
「この食べ物は腐った臭いがするから食べたらダメだ」、

「硫黄臭がするのがこれ以上進むと危険」
と、生命維持にかかわるものなので俊敏に判断するために、嗅上皮は脳とダイレクトにつながっています。

そのため、『臭いを感じない』というのは大きなストレスで、特に食事においては味覚はあっても嗅覚が無い場合風味が感じられないため、食欲不振になる可能性があります。

嗅覚障害は、直接的な嗅上皮や嗅細胞の損壊だけでなく、嗅細胞と脳をつなぐ神経の断裂や異常、また嗅覚の信号を受け取る脳に障害があることで発症することがあります。

麻痺やろれつが回らなくなるなどの症状が出ずに、嗅覚障害がでたので詳しく検査したところ、脳内出血の箇所が発見されたという事例もあります。

嗅覚の検査に関しては、静脈にアリナミンを注射して、注射からアリナミン独自の匂いを感じなくなるまでの時間を測る静脈性嗅覚検査や、5種類の匂いを8段階の強さに分けて判定する嗅覚閾値検査の基準となっている嗅覚測定用基準臭と言う方法があります。

また鼻を欠損していなくても、骨折や再建手術などで鼻全体や鼻腔が変形または狭窄したため、鼻呼吸が困難という後遺症もあります。

その場合、口呼吸を余儀なくされてしまうため、ドライマウスや口臭の発生、風邪などの感染症のリスクの増大などが懸念されます。



日常生活への影響

鼻の障害で起こりうる日常の支障は、大きく分けて3つあります。

1つ目は、欠損や変形による外貌の醜貌です。

鼻は顔の中でも目立つ部位にあるため、交通事故でなくても美容整形での手術が盛んであるほど、顔の雰囲気を印象付ける大事な部位です。

そのため、交通事故で変形をしたり、さらに欠損したりした場合には、患者が自分の顔を受け入れられなかったり、外出した際に周囲の人間から心無い言葉を掛けられて傷ついたりすることがあります。

人によっては家に引きこもるだけでなく、家族とも顔を合わすことを避けて自室に引きこもると言ったことが起こり、うつや対人恐怖症・無気力症といった精神疾患の引き金にもなります。

嗅覚の喪失は、被害者にとって、ツライ障害です

2つ目は、嗅覚の減衰・喪失です。

臭いを感じる部分の嗅外皮や嗅細胞が外傷により働かなくなったり、神経伝達の神経に障害が起こったり、嗅覚をつかさどる脳の部分の腫瘍や出血などが原因で臭いを理解できなくなったりということがあります。

『臭いが分からない。鼻が利かない。』というのは、眼が見えない・耳が聞こえないと言った症状からすると軽く見られがちですが、実際にはそうではありません。

料理人やパティシエと言った職業の場合、香りによる食材や調理の状態の把握が欠かせないため、嗅覚は不可欠と言えます。

また、薬品や有機物を使用している職場では、それらの匂いを感じないと有毒成分が流出した際に気づくことができず命の危険性もあるため、配属替えや転職を余儀なくされるケースもあります。

なにより、嗅覚が無い状態で食事をした場合、食事の楽しみが半分以下になります。

風邪などで鼻が詰まった状態で食事をされた経験のある方ならば分かると思われます。

例えば、健康状態でメロンを食べれば「メロンを食べている」と理解できますが、鼻が利かない状態であれば味覚と触感だけになるため、「甘い果物っぽいもの」というのは分かりますが、メロンなのかモモなのかマンゴーなのか区別がつかないということが起こります。

それが風邪などの一時的なものならば我慢できるかもしれませんが、後遺障害として一生香りが感じられない場合には、「何を食べても同じ」と食生活が乱れたり、食べること自体に興味がなくなり食欲減退や拒食症の要因にもなります。

「鼻呼吸が困難になる」という症状は影響が大きいです

3つ目が、鼻の変形や鼻腔狭窄による鼻呼吸が困難となる事です。

呼吸には3つあって、鼻呼吸・口呼吸・皮膚呼吸がありますが、呼吸の多くを担っているのが鼻呼吸です。

近年では睡眠時の口呼吸が問題となっていますが、覚醒時の口呼吸にも様々なデメリットがあるため、医師も鼻呼吸を推奨しています。

鼻呼吸の場合、鼻毛や粘膜がフィルターとなってほこりやウィルスをろ過しています。

しかし、口呼吸の場合はダイレクトにほこりやウィルスが肺を直撃してしまうため、普段から免疫細胞が働いてしまうため疲労しやすく、風邪などを引きやすくなります。

また、口呼吸をすると口の中が乾燥するドライマウスになります。

ドライマウスになると唾液が減るため、口内のバイキンや汚れが唾液によって洗い流されづらくなるため、口臭や歯周病・虫歯になりやすくなり、また悪化しやすくなります。

ほかにも乾いた外気が直接気管に入るので、のどや肺を痛めやすく風邪をひきやすくなり、アレルギー症状体質になりやすくなります。

特に高齢者の場合は痰が絡みやすいのですが、痰は気管についた細菌やウィルスを白血球などが倒した死骸も含まれます。

つまり口呼吸すればするほど気管は外気に触れやすくなるため、細菌やウイルスが増えて痰が絡まりやすくなります。

そして、呼吸がしづらいため浅い口呼吸をしてしまい、さらに気管に痰が絡まりやすくなる負のスパイラルとなる事があります。

鼻に関する後遺障害認定について

交通事故での鼻に関する後遺障害は、他の部位から比べると等級の差が第9級から第14級で収まる事が多いです。

第9級(自賠責保険金額616万円) ・鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

第12級(自賠責保険金額224万円) ・T&Tオルファクトメータによる基準嗅覚検査の認定域値の平均嗅力損失値が5.6以上の場合(嗅覚脱失) ・鼻の欠損を伴わない場合であっても、鼻呼吸困難な障害を残す場合(鼻呼吸困難)

第14級(自賠責保険金額75万円) ・T&Tオルファクトメータによる基準嗅覚検査の認定域値の平均嗅力損失値が2.6以上5.5以下の場合(嗅覚脱失)

補足すると、第9級の『鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの』は、鼻軟骨部の全部または大部分を欠損し、鼻呼吸困難もしくは嗅覚脱失があるものを差します。

このように見ると、鼻の後遺障害認定は他の身体の箇所に比べて後遺障害等級が低めになる傾向があります。

鼻の後遺障害は、命の危険に直結したり、日常生活を送るのに多大な支障があるとは言い難いという面があるため、このような後遺障害等級になります。

鼻の後遺障害によって「収入が実際に減少したか?」と争われることが多い

交通事故による鼻の後遺障害に係る紛争では、後遺障害等級以上に労働能力喪失率が重要視されることがあります。

後遺障害等級により、逸失利益を計算する上の労働能力喪失率が算出されます。

労働能力喪失率は第9級で35%、第12級で14%、第14級で5%です。

つまり、重篤な障害であるほど労働能力がなくなり給料が下がるという不具合が生じるため、その補填をするのに逸失利益と言う形で加害者側に請求します。

後遺障害等級が認定されれば、ただちに労働能力喪失率が適用された逸失利益が加害者側から弁済されるかというと、そうではありません。

逸失利益とは交通事故による後遺症で、将来的な収入の減額を補てんする物です。

裏を返して言うと、交通事故による後遺障害が残っても、収入の減少が認められない場合には、逸失利益は認められないことになります。

例えば、普通のサラリーマンが嗅覚脱失になって、臭いが感じられなくなっても、仕事の支障はありません。

しかし、料理人やパティシエと言った食材の香りや調理中の香り、仕上がった料理やスイーツの香りの調和など、香りによって品質を判定していたり、化学薬品を扱う工場に勤務しており薬品臭を嗅ぎ分けなければ事故が起こると言った場合、嗅覚脱失は場合によっては仕事をするのに致命的な障害になります。

そのため、判例でも嗅覚脱失により仕事に支障が出ると判断された場合には、後遺障害等級による労働能力喪失率が適用された逸失利益が認められることが多く、先述のような料理人などで多大な支障が出る、もしくは仕事が遂行できないと認められた場合には、後遺障害等級はそのままで労働能力喪失率を引き上げて適用された判例もあります。

また、就業前の学生であっても、大学生と調理師専門学校に通う学生とでは、将来就職する職業が専門学校生の方がより専門的な分野に限定される可能性が高くなるため、労働能力喪失率を引き上げて適用されたり、後遺障害等級通りの労働能力喪失率であっても別途慰謝料の増額と言う形で補償された判例もあります。

鼻に関する障害、特に嗅覚脱失に対する労働能力喪失率に関しては、被害者の職業や将来性が重要視されるため、ケースバイケースとも言えます。

そのため、加害者側から逸失利益が無い場合や後遺障害等級による労働能力喪失率よりも低い場合でも、即座に不当等は言い難いです。

反対に、被害者側から後遺障害等級による労働能力喪失率よりも高い割合の逸失利益の請求があった場合も、直ちに高すぎるとも言えないケースもあるため、交通事故に精通した弁護士に相談をして、示談が不調に終わった場合には裁判所の判断を仰ぐのが現実的と言えます。



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