耳の後遺障害について

 

交通事故での耳の障害というと耳介、いわゆる目で見える部分の耳が欠損したり、変形したりすることが一番に思いつくと思います。

次に耳が聞こえなくなるという症状が想像できると思いますが、もう一つ平衡感覚を保つという大きな役割があります。

耳介の損壊のケース

まず、一つ目の耳介の損壊は、耳が切断されてしまったり、地面に叩きつけられてすり潰されたり、自動車が炎上してやけどを負ったことにより耳が壊死した等で、耳の全てもしくは一部が無くなったり、大きく変形してしまうことを差します。

耳介はなくても命に別状はありませんが、音を聞きやすくする機能があるため、耳介が無いために音や声が聞きづらくなります。

また、耳介が無い事で醜貌(みにくい容貌・見た目)として、思い悩まれる方も多くいます。


「音が聞こえない」という障害のケース

二つ目には音が聞こえない、音が聞きづらいという障害があります。

音が聞こえないと聞くと鼓膜が破れることを思い浮かべる方が多いと思いますが、この外傷性鼓膜穿孔の軽度の物であれば二週間程度で自己治癒します。

しかし、大きく鼓膜が損傷した場合には、外科的手術が必要となります。

音が聞こえない、聞こえづらくなるという症状の原因は、鼓膜が破れるなどの外傷的要因のほかに、神経が関係してくることがあります。

例えば、脳内出血などで聴覚に関する部分の脳にダメージを負ってしまった場合や、聴覚の神経節の圧迫のほかに、難聴の発症もあります。

難聴と聞くと「耳が聞こえづらいだけではないのか?」という意見がありますが、実際の難聴は
『音が小さくしか聞こえない』
『音に過剰なエコーがかかった状態で聞こえる』、
『常にジャンボジェット機の下にいるような轟音がする』
と人によって症状が様々で「補聴器さえつければ聞こえる」と言った単純なものではありません。

また、難聴の原因は脳のダメージや神経の圧迫など理由がはっきりしているものよりも、身体的な原因が明確でないものも多く、治療が困難である事がほとんどです。

平衡感覚の障害

3つ目が平衡感覚(バランス)に関するものです。

耳の奥には三半規管と言われる「外側半規管」「前半規管」「後半規管」の3つの半規管があります。

三半規管の中はリンパ液で満たされており、体が動くことによって生じるリンパ液の流れを感じて、身体の平衡感覚を保っています。

そのため、三半規管に異常が生じると平衡感覚が失われ、めまいや吐き気・頭痛などが生じます。

三半規管に異常が生じる原因は様々にあります。

三半規管の一部が破れて中のリンパ液が流れ出てしまうと、リンパ液不足から三半規管が効かなくなります。

傷が小さければ自己治癒ができますが、大きく裂けている場合には外科手術が必要になります。

また、三半規管の中には耳石と言われる炭酸カルシウムが硬化したものが入っています。

普段は耳壁に引っ付いているのですが、耳石が外れてしまうと三半規管内のリンパ液の流れが乱れて激しいめまいを感じます。

良性発作性頭位めまい症と言われるもので、耳石が元の場所に戻るとめまいも収まるのですが、人によっては頻繁に起こるため日常生活に支障が出ることもあります。

耳以外の要因としては、鎖骨下動脈盗血症候群というものがあります。

鎖骨下動脈盗血症候群とは、鎖骨の下にある動脈の狭窄などが原因で十分な血液が頭部に回らず、小脳や耳の血流が著しく不足して、めまいや難聴を引き起こすことです。

この場合、耳の検査をしてもめまいや難聴の直接的な原因が見つからず、血流の異常や耳の部分的な酸素飽和濃度の測定により、やっと鎖骨下動脈盗血症候群が原因で判明すると言ったケースもあります。

鎖骨下動脈盗血症候群が原因のめまいや難聴であれば、動脈の狭窄を改善するためにバルーンで血管を広げたり、人工血管のシャントを入れる手術をすることにより症状が改善します。

日常生活への影響

交通事故により耳介の一部もしくは全部を失ったり、大きく変形したりした場合には、音が聞こえづらくなるという障害が現れることがあります。

音をよく聞こうとする時に手のひらを耳にあてるしぐさをしますが、あれは前からくる音を手のひらで反射して集音しているのですが、普段は耳介がその役割を担っています。

そのため、集音器官である耳介を失った場合には、音が小さく聞こえて聞こえづらくなるため、場合によっては補聴器を利用した方が良い場合もあります。

また、交通事故の被害者の中には、耳介がない事で醜貌(みにくい容姿)を思い悩まれることがあります。

エピテーゼ(医療用人工模造物)で欠損した耳を補えば、眼鏡をかけることも可能な事もありますが、容姿を気にされる方、特に若い女性であれば大きな心理負担で、人に見られるのが怖くなり対人恐怖症や鬱を発症する人もいます。

耳漏や難聴の影響

また、人によっては交通事故後に耳漏に悩まされる方もいます。

耳漏とは耳だれとも言われ、耳の中に分泌液が出てくることを言うのですが、交通事故の場合は鼓膜の破損により分泌液が出て、それにより中耳炎を引き起こすパターンが多いです。

この場合、鼓膜が治らなければ分泌液が出続けるため中耳炎が治りにくいだけでなく、難聴を引き起こす原因にもなります。

難聴の場合は音が聞きづらいと言ったほかに、不快な音が聞こえ続けると言った症状がある人がいます。

難聴は単に音が小さくしか聞こえない症状のほかに、音がハウリングして聞こえたり、ジェットエンジンのような轟音が常に聞こえたり、音が過剰に大きな音に聞こえるといったように様々なタイプがあります。

そのため、交通事故以前は健常者であった人が、不快な音が聞こえるタイプの難聴に罹患した場合、大きなストレスになります。

耳をふさいでいても不快な音は常に聞こえている状態で、人と会話しても不快な音でかき消されてしまうため、人によっては難聴によりうつ病を併発する人もいます。

「めまい」や「吐き気」の症状が出ることもある

ほかに耳が原因の症状にはめまい・吐き気があります・ 耳の中には平衡感覚(バランス)を取るための器官である三半規管があります。

その三半規管が何らかの原因で異常をきたすと、平衡感覚に異常が出てきます。

「まっすぐ座っているはずなのに、姿勢がゆがんでいる」、
「少しつまづいただけでも大きくバランスを崩す」
と言った比較的軽微な症状もありますが、めまいや吐き気を誘発する場合もあります。

なぜ、めまいや吐き気が誘発されるのかというと、人はバランスを取る際に三半規管だけではなく、視覚情報にも頼っています。

三半規管に異常があると、眼で見た情報は『まっすぐ立っている』と伝わってきても、三半規管からの情報は『右に傾いている』と伝わってくるため、脳内で混乱が生じます。

そうなると、体のバランスを保つための脳からの命令がおかしくなってしまうため、めまいが生じます。

さらには、車酔いの原因と同じ理由の『視覚と三半規管の情報のアンバランス』から、吐き気も誘発されてしまうのです。

三半規管の異常は、耳漏など比較的わかりやすい原因ならば外科的な処置や服薬により改善するので治療方針も固めやすいのですが、厄介なのが原因不明とされるものです。

めまいの症状が起こる病気は、良性発作性頭めまい症といった軽度の物もあれば、脳に大きなダメージを負っているものまでさまざまにあるため、初めに診断された病気とは違うものが本当の原因の病気であったり、何種類の検査をしてもめまいの原因の病気にたどり着けないと言ったケースもあります。

めまいの症状が重い人だと、立ち上がることができずに一日中寝込んだり、食事も吐き気のために十分に取れず栄養不足に陥ると言ったケースもあります。



耳に関する後遺障害認定について

交通事故での耳に関する後遺障害は、両耳が聞こえなくなる重篤なものから、軽度のめまいといった比較的軽度のものまで幅広くあります。

交通事故の受傷により以前より大幅に耳の機能が低下した場合、一律に後遺障害認定の等級が決まるかというとそうではありません。

耳に関する後遺障害認定の要件は、聴力に関する物だけでなく、耳介の欠損やめまいや耳漏など多岐にわたるため、細かく分類されています。

第4級(自賠責保険金額1889万円) ・両耳の聴力を全く失ったもの

第5級(自賠責保険金額1574万円)

第6級(自賠責保険金額1296万円) ・両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では、普通の話し声を解することができない程度になったもの

第7級(自賠責保険金額1051万円) ・両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

第8級(自賠責保険金額819万円)

第9級(自賠責保険金額616万円) ・両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの ・1耳の聴力を全く失ったもの

第10級(自賠責保険金額461万円) ・両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの ・1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの

第11級(自賠責保険金額331万円) ・両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの ・1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの

第12級(自賠責保険金額224万円) ・鼓膜の外傷性穿孔による耳漏が常時あるもの ・耳鳴りに係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの ・1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

第13級(自賠責保険金額139万円) ・1眼の視力が0.6以下になったもの ・1眼に半盲、視野狭窄または視野変状を残すもの ・両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたは、まつげはげを残すもの

第14級(自賠責保険金額75万円) ・1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの ・鼓膜の外傷性穿孔による耳漏があるもの ・外傷による外耳道の高度の狭窄で耳漏を伴わないもの ・難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に証明できるもの

聴力の障害が争われるケース

聴力の検査には純音聴力検査と語音聴力検査があり、特に純音聴力検査は日を変えて3回行われるため重要視されます。

ただ、聴力は加齢により低下するため、交通事故以前から聴力の低下があったと認められると、後遺障害認定は認められないか、認められても後遺障害慰謝料は割り引かれます。

また、眼の障害認定においては、検査により原因が明らかであるのならばよいのですが、耳鳴などは患者自身から愁訴・自己申告によるものだけで医学的な画像証拠などがない場合もあり、聴力検査に置いてもある程度は『聞こえないふり』をすることもできるため、加害者側から障害の程度について争われることがあります。

後遺障害認定されるか否で、後遺障害慰謝料が支払われるか変わってくるのですが、弁護士を通じて請求する場合には判例基準で請求するため、自賠責基準に比べると大幅に増額します。

自賠責基準だと慰謝料部分は第4級で712万円、第9級245万円・第11級で135万円ですが、判例基準ですと第4級で1670万円、第9級690万円、第11級で420万円なので、差は3倍近くなります。




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