眼の後遺障害について


交通事故で目に障害を負った場合、思い浮かぶのが眼球を損傷したという直接的な怪我によるものが一番に思い浮かぶと思います。

しかし、交通事故が起因する眼の障害の多くは、完全失明と言った重篤な事例だけでなく、視力低下・視野狭窄・調整機能障害(ピントが合わない)・乱視など、『視え方』として発症することが多いです。

眼に障害が起こる大きな原因には2通りあり、眼の角膜や水晶体などに傷を負ったり、熱で変質してしまったことによる物理的な受傷と、視神経の異常や脳などに異常がありそれが目の異常として発症している神経が原因のものがあります。

角膜に傷がつくケース

交通事故で眼球に受傷する例として一番多いのは、角膜に傷がつくことです。

角膜は厚さ0.5㎜の薄さで眼球の一番上を覆っており、常にほこりやゴミなどから角膜の下の眼球本体を守っています。

『物を見る』という眼球の性質上から、角膜は透明性が必要であるため90%をコラーゲンで作られています。 コラーゲンは傷つきやすい性質のため非常に新陳代謝が早く、比較的浅い傷であれば数時間で修復を行います。

しかし、角膜自体に血管が通っていないため、新陳代謝のための栄養や成分の多くは、涙腺からの涙により補給しています。

まれに交通事故で涙腺の機能が衰えて涙がほとんど出ない『ドライアイ』という症状になってしまうと、角膜の修復が追いつかず目に違和感を覚えることになります。

ドライアイの症状が出た場合に、点眼薬(目薬)は有効ですが、重度の症状である場合には2時間おきに点眼薬が必要なケースもあります。

また、角膜が大きく傷つき修復する際に、変形してしまう事があります。

膝などに大きな怪我をした時に傷の跡が残ってしまうのと同じで、怪我の度合いが大きく、受傷者の年齢が高いほど起こりやすくなります。 このような場合には、角膜移植と言った外科手術が必要となります。

視野狭窄の場合

視野狭窄は見える範囲が狭くなってしまう症状なのですが、人によっては『小さな穴を覗いているような感じ』・『右半分だけが見えない』・『視界の上の1/3にかすみがかっている』と、視え方に差があります。

機能調整障害の場合

機能調整障害は、ピントが合わずぼんやりと見えたり、ものが2重3重に見えたり、めまいの様にものが動いて見える症状があります。

このような見え方の症状は眼球本体に障害があるよりも、脳や脊髄などの神経に障害が生じていることが多く、バレリュー症候群と言われる首の損傷により頸部の交感神経に異常が生じたことにより、症状が出ていることもあります。

眼鏡・コンタクトレンズの利用について

視力低下や機能調整障害や乱視などは、眼鏡やコンタクトなどである程度改善しますが、重度の場合は補助用具ではまかなえ切れず、視野狭窄や調整機能障害は補助道具では改善することが困難です。

視力低下により日常生活を送ることが困難なのは予想できますが、調整機能障害では物がゆがんで視えたり、揺れて視えてしまったりするため、終始めまいや乗り物酔いのような状態に苛まれます。

そのため、吐き気や倦怠感が起こり、副次的な症状として食欲不振やうつの状態が発症することがあります。

バレリュー症候群のケース

脳梗塞・脳挫傷と言った脳に異常がある場合には、外科的処置が行われ内服薬が処方されることがあるのですが、バレリュー症候群の様に交感神経の異常の場合は、内服薬による交感神経の鎮静や運動療法くらいしか対処方法がないため、劇的な改善が難しいと言えます。

眼の障害は交通事故後にすぐに表れるものもありますが、バレリュー症候群などは数日~数週間後に発症します。

バレリュー症候群は頸部の交感神経の過緊張や興奮によるもので、むち打ちを発端として発症することが多いです。

交通事故直後はむち打ちと診断されていたのに4週間たってもよくならず、バレリュー症候群のめまいなどの症状が出て悪化するということがあります。


日常生活への影響

人は生活する際に周りの状況を確認するのに、視覚による情報に大きく頼っています。
その割合は視覚による情報が80%で、残りの20%に嗅覚や聴覚などすべてが含まれるため、いかに視覚が重要か分かります。

交通事故により両目の完全失明となった場合、今まで視覚情報に頼っていたものが失われ、聴覚や嗅覚などの残りの五感を鋭敏にする必要があるため、以前の生活と同程度の日常生活を送るためには、大きく努力する必要があります。

 

片目の失明により遠近感が測れなくなる

交通事故によっては、片目だけ完全失明や視力低下ということもあります。

「両目に障害が残るよりも、片目だけの方がマシなのではないか。」という意見もありますが、片目だけの障害特有の支障が出ることがあります。

一番多いのが、遠近感が測れない障害です。
通常両目で見ている場合には、右目と左目で見えている映像は微妙に違います。
脳内でその違いにより物との距離感を測っているのですが、単眼のみの映像だとそれが不可能です。
そのため、コップをつかもうとしてもそれよりも手前で握ったり、道を歩いていてうまくすれ違えずに人や物と当たってしまったりということがあります。

平衡感覚への影響

人が状況把握に視覚を使っているのは遠近感だけでなく、平衡感覚も一端を担っています。
平衡感覚は耳内にある三半規管が担っていますが、視覚により補正しています。
バランステストで目を閉じてその場で50歩足踏みをして、始めの地点からどれだけずれているか測る物があります。
これは眼を開けていた場合、体がずれていくことを視覚で感じて無意識に修正するためその場にとどまるのが容易ですが、閉じている場合には三半規管のみになるためずれる人の方が多く、高齢であるほど視覚情報が無いとバランスとりにくくなります。

また、右と左で見え方が違う、ゆがんで視えるなど正常に見えないという場合には、吐き気やめまいを感じ、日常生活以前に立ち上がる事すら不可能ということもあります。

三半規管は『体はまっすぐである』と言う信号を脳に送っていても、右目は『右斜めに歪んでいる』、左目は『前に傾いている』とバラバラの情報が脳に送られるため、脳が適切な体のバランスが取れなくなり、めまいや吐き気と言った症状が出るのです。

自覚症状に乏しい「視野狭窄」「涙腺異常」

上記の物は自覚症状がある眼の障害なので、患者自身や医師も対処しやすいケースなのですが、本人に自覚症状が無いにもかかわらず日常生活に支障が出ているというケースもあります。

これらの症状で代表的な物には『視野狭窄』や『涙腺異常』があります。
視野は正常な人で、片目で鼻側および上側で約60度、下側約70度、耳側に約90~100度で、こめかみに指を置いた場合その指がギリギリ見えるかどうかぐらいの広さです。
交通事故直後から視野狭窄が起こっていたのならば自覚しやすいのですが、少しずつ進行していった場合、視覚が狭くなっていることに気付かず、狭い視野で生活することに慣れてしまうため、周囲の人間が「最近足元の物を蹴飛ばしたり、肩が壁すれすれで歩いたりしている。」と指摘して、ようやく以前よりも視界が狭くなっていることを自覚するということがあります。

涙腺異常では、涙腺から分泌されるいわゆる『涙』の量に異常が生じることが多いです。

涙が止まらなくなる過多の状態であれば気づけますが、反対の減少の場合には気づきにくいことがあります。

涙の量が少ない場合にはドライアイになりますので、眼のかゆみやピントが合わない、疲れやすいと言った症状が出ます。

しかし、パソコン作業などに従事しておりドライアイになりやすい環境でしたら、「加齢や疲れのせい。」と、交通事故による後遺障害と結び付けずに適切に治療しないということが起きます。

 

眼に関する後遺障害認定について

交通事故での後遺障害は、両目が失明する重篤なものから、まつ毛の欠損といった比較的軽度のものまで幅広くあります。

交通事故の受傷により以前より大幅に視力が落ちた場合、一律に後遺障害認定の等級が決まるかというとそうではありません。

眼の視力に対する後遺障害認定の要件は、細かく条件付けされています。

第1級(自賠責保険金額3000万円) ・両目を失明したもの

第2級(自賠責保険金額2590万円) ・1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの ・両眼の視力が0.02以下になったもの

第3級(自賠責保険金額2219万円) ・1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの

第4級(自賠責保険金額1889万円) ・両目の視力が0.06以下になったもの

第5級(自賠責保険金額1574万円) ・1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの

第6級(自賠責保険金額1296万円) ・両目の視力が0.1以下になったもの

第7級(自賠責保険金額1051万円) ・1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの

第8級(自賠責保険金額819万円) ・1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下になったもの

第9級(自賠責保険金額616万円) ・両目の視力が0.6以下になったもの ・1目の視力が0.06以下になったもの ・両眼に半盲、視野狭窄または視野変状を残すもの ・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

第10級(自賠責保険金額461万円) ・1眼の視力が0.1以下になったもの

第11級(自賠責保険金額331万円) ・両眼の眼球に著しい調整機能障害または運度障害を残すもの ・両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの ・1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

第12級(自賠責保険金額224万円) ・1眼の眼球に著しい調整機能障害または運度障害を残すもの ・1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

第13級(自賠責保険金額139万円) ・1眼の視力が0.6以下になったもの ・1眼に半盲、視野狭窄または視野変状を残すもの ・両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたは、まつげはげを残すもの

第14級(自賠責保険金額75万円) ・1眼のまぶたの一部に欠損を残しまたは、まつげはげを残すもの

 

眼の障害の評価方法

眼の障害に関しては、眼鏡やコンタクトなどの補助道具により改善するものもあり、視力低下や乱視などは、実際に交通事故後に視力低下が起こったとしても、眼鏡やコンタクトで矯正可能な範囲であれば、後遺障害認定とまではいかないことがあります。

以前は裸眼での視力が重要視されてきましたが、コンタクトが一般化し眼鏡もレンズの軽量化や高性能化から、眼鏡やコンタクトなどで矯正した視力で後遺障害認定の判定が行われます。

交通事故以前から同じような状態であれば後遺障害認定は認められないか、認められても後遺障害慰謝料は割り引かれます。

交通事故以前から視力が0.1であり、交通事故により0.02となった場合、第1級の後遺障害認定が認められても第9級の状態からの悪化のため、1100万円-245万円=855万円が後遺障害慰謝料となります。

紛争となるポイント

眼の障害認定において、加害者側と交通事故との因果関係が争われることが多いです。

眼の障害の場合、確立された検査方法が複数あるため、医学的な証明が容易なことが多いので、障害がある事ではなく障害が起きた原因が焦点となります。

交通事故以降に負った怪我や、持病の悪化によるもの、加齢によるものなどであると、加害者側が主張して争われることが多いのです。

判例においても直接的な受傷以外による目の後遺障害認定においては、交通事故の状況や被害者の年齢・既往症・治療経過を鑑みられるため、被害者が一方的に有利な判決が下りるとは言い切れません。

特に交通事故の被害者が高齢である場合には、交通事故以前に眼科医にかかっておらず健康であったと主張しても、年齢相応の視力低下などの視力障害がすでにあったとして扱われることもあるため要注意です。

後遺障害認定されるか否で、後遺障害慰謝料が支払われるか変わってくるのですが、弁護士を通じて請求する場合には判例基準で請求するため、自賠責基準に比べると大幅に増額します。

自賠責基準だと慰謝料部分は第1級で1100万円、第2級で958万円、第4級で712万円、第9級245万円・第11級で135万円です。

一方で、判例基準ですと第1級で2800万円、第2級で2370万円、第4級で1670万円、第9級690万円、第11級で420万円なので、差は3倍近くなります。



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